山本鈴美香・著「エースをねらえ!」05巻「きなさい 死にものぐるいで」

vol.05 「全日本ジュニア選抜試合」の巻

2回戦の相手、中尾は岡ひろみと全く同じタイプ。

もし宗方仁コーチがあちらの高校に赴任していたら、彼女が日本のトップ・プレイヤーになっていたかも知れません。

その宗方コーチ、第1セット後のアドバイス。

「あとは精神力だ ここまでだと思ったとき もう1歩ねばれ! それで勝てないような訓練はしてない」

1回戦でひろみと当たったクレーマー母娘とは違い、正々堂々真っ向勝負を挑んでくる中尾に、ひろみも燃えまくります。

勝負はフルセットの末、ひろみが制しました。

ひろみが喜びを表わすのは勝利を決めた瞬間ではありません。

宗方コーチが笑顔を見せてくれたときです。

ひろみにとって勝利は二の次、コーチの期待に添えたかどうかが重要なのです。

ホッと一息のシャワータイム。

そこへが乱入する宝力冴子

ひろみに化粧品のレクチャーをはじめますが、今の彼女には必要ありません。

なぜなら、ひろみを美しくする一番効果的なコスメはシャネルでもディオールでもなく、宗方コーチの熱い視線なのですから。

「ウインブルドン準決勝で コート夫人をくだして決勝にすすみ チャンピオンは時間の問題といわれる クリス・エバートは18歳 おなじくベスト8に勝ちすすんだ ビヨン・ボーグは17歳」

世界のトップアスリートと日本の平凡な高校生ひろみを当たり前のように同一線上に見立てて語るコーチ。

「いったいいくつだ おまえは じゅ 17です できないと思うな 世界の若手がみんな やっていることだ」

と、ひろみの脳内ブレイクスルーを計ろうとします。

たしかに未だに

「日本人でもやればできるんだ」

とか

「日本人ばなれした運動神経」

とか、はじめから劣等意識の染みついた言葉を耳にすることがあります。

またこんな話を聞いたことがありませんか?

絶対に超えられないと言われていた記録をある一人の選手が破ったとたん、ライバル選手たちも次々にその記録を破りはじめたという──。

脳内ブレーキがどれほど強力か教えてくれるエピソードだと思います。

ですからひろみが本気で世界を目指すならば、まずはひろみ自身が「出来るんだ!」という自信をもつことが絶対条件なのでしょう。

2学期が始まりました。

親友の牧と上田くんの交際はうまく行っているもよう。

……このあたり、ページ数は少なめですが、なくてはならない描写です。

とつぜん宝力冴子からの電話。

選抜大会は突如とりやめ、のこっている者同士で戦わせ、その中からメンバーを選別することになった、と。

j;10月! 16名!! はやい! はやすぎる! ああ!! なにができる どこがのびる あとひと月たらずで!! はやすぎる はやすぎる!!」

と、焦りまくるひろみ。

前にもチラッと書きましたが、"時は待ってくれない"が「エースをねらえ!」のテーマのひとつだと思います。

他のマンガと違い「エース~」を読むときだけ、思わず襟を正してしまうのは、「時間のかけがえの無さ」

「今という時間は二度と戻ってこない」

という現実をあらためて突きつけられるからでしょう。

3年生は追い立てられるように部活引退、そして受験戦争に突入です。

しかしそこは青春まっただ中。恋も遊びも大切です。

ひそかに心を寄せ合っている二人、ひろみと藤堂先輩のために、藤堂の親友、尾崎がナイスな世話をやいてくれます。

昼寝をしている藤堂。

ちょっかいを出す尾崎。

藤堂はてっきり尾崎だと思い、腕をつかみ、ぐいっ!

目の前にはひろみの真っ赤な顔。

藤堂はいちおう尾崎に怒ってみせますが、内心では感謝していることでしょう。

まあでも、そこはもっとこう、ギュウウっと……

……余計なお世話でした。

あっというまに10月。

選抜大会が始まりました。

ひろみの最初の相手はなんと緑川蘭子

善戦するもストレート負けするひろみ。

負けはしたものの

「向こうは上級生だから」とかの泣き言は口にしません。

「そして次の相手は… お蝶夫人… わたしのあこがれ わたしの理想 わたしをテニスにいざなった方─── そのあなたを わたしはいま 本気でたおしたいと思います」

キター! ひろみの決意表明。

対するお蝶夫人。

凜と立つその姿はまるでマリー・アントワネットのよう。

「きなさい 死にものぐるいで」

静かに言い放ちます。

「ひろみ…… あなたはいつか 気づくことがあるかしら その手でどれほどのものを あたくしからとりあげてしまったか あの人! すずしい目をして さわやかにわらうあの人も 火のようにはげしく力強いあの人も そして心からかわいがった あなた自身も けれど もういい いま わかれをひかえてうかぶのは たのしかった日々だけだから───」

うーん、ここはカラーページで見たかったです。

ついに始まる運命のゲーム。

「あなたをたおそうとたたかうことは あなたにそむくことではないのですね あなたにおそわったこの世界に こんなにわたしがうちこんで あなたをたおす気にまでなったことを よろこんでくださるのですね 感謝します (ぎゅっとボールを握る) 力がだしきれますように!」

万感の思いを込め、今まで培ってきた技をすべてひろみに披露してみせるお蝶夫人。

ひろみ、敗れて悔いなし──。

これでひろみの戦績は0勝2敗。

選抜は絶望的となりました。

それでもリーグ戦は続きます。

3回戦の相手は、待ってました!の宝力冴子。

この二人だけが2年、後は全員3年生です。

大接戦の末、ひろみがゲームをものにしました。

「負けおしみじゃないのよ ほんと うれしいのよ 日本でこんなおない年のライバルが できるなんて思ってもみなかった! ステキよ あなた あなたみたいなプレイ大好き!」

あなたこそステキです、宝力さん。

4戦すべてが終わりました。

結局ひろみは2勝2敗。

4勝組は、お蝶夫人と緑川蘭子の2名。

3勝組は9名。

2勝のひろみは落選と思われましたが、ゲーム内容が良かったのと、お蝶夫人のパパ(理事長です)の強烈プッシュもあり、見事メンバーに選ばれました。

このあたりでテニスはいったんお休みして──学園マンガには定番の文化祭が始まります。

ひろみはなんと学ランを着て、ステージで歌を披露。

サポートするのは藤堂と尾崎と千葉。

イケメン3人に囲まれたひろみは、全校女生徒の羨望とジェラシーの視線を浴びるのでした。

(藤堂、ギターはサウスポーなのね)

宝力冴子も遊びに来てくれました。

だが、ひろみを焚きつけるのは忘れません。

「ねえ あたしと組まない? いっしょにいまの3年をおいぬかない!? おどろくことないじゃない あたしたち 世界へでるための選手よ たかがひとつ年上の連中に 勝てなくてなにが世界よ!」

行動の人、冴子はオーストラリア時代の友人を日本に呼んでいました。

西高3年生がテニス部を引退する日がやってきました。

宗方コーチの粋な計らいで「藤堂・岡 vs. 尾崎・竜崎」という夢のエキジビションマッチが行なわれます。

フェンスの外に、ゲームを熱心に見つめている外国人の姿が。

ひろみたちと同年代らしいふたりの男女です。

物語は新たな局面へ───。

「エースをねらえ!」LINKS

「エースをねらえ!」01巻「試合なんてものはやってみなけりゃわからないんだぞ」

「エースをねらえ!」02巻「つらくなんかない!! つらくなんかない!!」

「エースをねらえ!」03巻「まだやれる まだじゅうぶんやれる」

「エースをねらえ!」04巻「うまいのと強いのとちがうでしょ」

「エースをねらえ!」05巻「きなさい 死にものぐるいで」

「エースをねらえ!」06巻「いずれ なにもかも思いでになる」

「エースをねらえ!」07巻「やりぬいてみせる! 命をかけても!!」

「エースをねらえ!」08巻「彼女におとる青春はすごすまい!」

「エースをねらえ!」09巻「もう何からも逃げない!」

「エースをねらえ!」10巻「この一球!」

「エースをねらえ!」11巻「絶対負けられない!!」

「エースをねらえ!」12巻「ひろみ 打ちなさい!!」

「エースをねらえ!」13巻「もう あともどりはできない」

「エースをねらえ!」14巻「やればできるんだ!」

「エースをねらえ!」15巻「わたし…がんばります!」

「エースをねらえ!」16巻「夢は死なないのだね 宗方君…!」

「エースをねらえ!」17巻「日本中が君の勝利を祈ってる がんばれ!!」

「エースをねらえ!」18巻(終)「……がんばってきます!」

マンガ「エースをねらえ!」………恐ろしい子!

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