映画『愛より愛へ』(1938) 小悪党といえばこの人、河村黎吉。

明日、11月7日は

吉村公三郎監督の命日です。

亡くなられてから今年で20年目になります。

『愛から愛へ』は、吉村氏が27歳の頃の作品。

島津保次郎監督の下、編集として製作に加わりました。

あらすじ (ネタバレあります)

職を探しながら小説家を目指している佐野周二。

女給をして彼をかいがいしく支える高杉早苗。

二人はアパートで同棲しています。

この頃は「アパート」なるものが新鮮だったもよう。

佐野の妹役の高峰三枝子が

見学と称して、偵察にやってきました。

ぎろっ、ぎろっと部屋の中をチェックする三枝子。

どうやらお眼鏡にかないまして、以後、三枝子は高杉早苗を

「おねえさま」と呼ぶようになります。

高杉は女給勤めであることから、佐野の親から交際を許してもらえません。

しかし、ここからは高峰三枝子が強力な援軍となり、高杉早苗の良い人ぶりを熱心にアピールしていきます。

三枝子と早苗の女性の友情が美しいです。

いったんは別れる寸前まで追い込まれる

佐野と高杉カップルですが、最後は晴れて交際を許されめでたしめでたし。

と書くと他愛ない話のようでありますが、途中、悲劇のフラグが何本も立つので

けっこうハラハラドキドキさせられました。

高杉が、まったく女給さんのように見えません。

いいところのお嬢さん然としています。

その“染まらなさ”っぷりが、映画に

ほどよい緊張感を与えてくれているように思います。

すっかり染まって、落ちついてしまう前に、佐野さん、早く何とかしてよ、みたいな。

佐野周二は口も悪く、さいしょのうちは

ヒモのようにしか見えません。

しかし実は高杉を心底愛していることが

だんだんと判明していきます。

要するに両者とも印象と中身が正反対。

こちらが抱いている先入観を

逆手にとられた形なのですが、印象がだんだんよくなっていくので、観ていてそれほど悪い気はしません。

河村黎吉が例により(?)小悪党を演じ、いい味を出しています。

この人だけは印象を裏切りませんね。

自分の得になるようにしか動かない、ある意味いちばん分かりやすいキャラクターです。

『愛より愛へ』

監督: 島津保次郎

脚本: 大庭秀雄

編集: 吉村公三郎

出演:

佐野周二 高杉早苗 高峰三枝子 水島亮太郎

河村黎吉