女盗賊“ルージュ”の完全犯罪。「Q.E.D. iff -証明終了-」第13巻。加藤元浩・著

連作読み切りなので、どこから読んでも面白い

「Q.E.D. iff -証明終了-」第13巻と 「C.M.B. 森羅博物館の事件目録」第41巻。

新刊が2冊まとめてAmazonさんから届きました。

さっそくレビュー行きます。

「Q.E.D. iff -証明終了-」第13巻

「殺人風景」

経営に行き詰まった

若き学習塾の経営者。

借金はかさみ、返す当てはありません。

一計を案じた塾長は、軽井沢の別荘で返済計画の

説明会を開きます。

呼ばれたのは3人の債権者。

そのうちの一人、Aさんは

塾長が専務に殺される場面を目撃します。

その殺害方法というのが奇想天外。

別荘は、忍者屋敷のように 釣り天井になっており、塾長は落ちてきた天井につぶされて

死んでしまうのです。

ところが二人目の債権者、Bさんは

まったく違ったものを目撃します。

道路わきに立っていた塾長が

専務の運転する車に

ひき殺されるところを見たと言うのです。

三人目の債権者、Cさんは

またまた別の証言をします。

専務が塾長をナイフで刺し、山中の古井戸に突き落としたのだと言います。

いったい誰の言うことが

本当なのでしょうか。

警察がやってきて、現場検証が始まりました。

落ちた天井の下を調べてみると、そこに塾長の死体はありませんでした。

道路にも人身事故の形跡はありません。

井戸の底もさらってみましたが、血の付着したナイフが見つかっただけでした。

果たして塾長はどこへ消えたのか。

もしかしたらまだ生きているのか、死んだとしたら、死体はどこに?

MIT(マサチューセッツ工科大学)を

15歳で卒業した超天才高校生、澄馬想くんが

あざやかにナゾを解き明かしてくれます。

「特異点の女」

ドイツとフランスの国境近く。

25億円相当の心臓病の薬を運搬中の

警備会社の車が襲撃されました。

犯人たちはまんまと薬を奪い、誰一人傷つけることなく逃走。

ユーロ・ポールは、その後

犯人たちの足取りを

まったく摑むことができません。

しかし思わぬ所から

犯行はほころびを見せ始めます。

犯人グループの一人が

自ら出頭してきたのです。

てんまつは以下のとおりです。

ちんけな犯罪ばかりを繰り返していた

彼のもとへある日、仲間が謎の女

“ルージュ”を連れて現われました。

ルージュはたちまちグループ内で

頭角を現わし、ボスとして君臨します。

25億円の薬の強奪の話を持ちかけ、計画を立てたのもルージュでした。

男たち3人を実行犯として操った

ルージュの作戦は図に当たり、ここに完全犯罪が成立。

あとは分け前をもらって解散……

という段になって、意外な事実が判明します。

アタッシュ・ケースに

薬が入っていなかったのです。

薬の詰まったアタッシュケースを

警備員たちが受け取るところを

犯人の男たちは事前に確認しています。

すり替えがあったとすれば、そのあとに違いありません。

ルージュのしわざだ……。

そう誰もが思いました。

しかしいくら思い返しても、彼女がアタッシュ・ケースに

さわるチャンスはありませんでした。

これ以上追求する術をもたない男たち。

不承不承ながら解散するよりありません。

ルージュはその後、消えました。

しかしルージュが

出し抜いたのは間違いない。 あの女ひとりに25億円を

持っていかれるくらいなら……

コケにされたのを恨みに思った

犯人のうちの一人が

司法取引をもちかけたというわけです。

その頃、春休みを利用してドイツに来ていた

澄馬くんと同級生の可奈ちゃんは、事件解決に手を貸すことになります。

薬はどうやってすり替えられたのか?

ルージュはどこへ消えたのか?

全てのナゾを澄馬くんが解き明かします。

事件はぶじ解決しました。

が、エピソードが終わりを迎えるのは

なんと6年後。

刑期を終えた犯人グループの男たちの口から

ルージュの思い出が語られて、物語は静かに幕を閉じます。

ルージュという女性は、悪党ながら

(だからこそ?)不思議な魅力をたたえています。

もしかしたらこれから澄馬くんと

何度も死闘を繰り広げる宿敵に

なるのでは? と思ったほどです。

シャーロック・ホームズとアルセーヌ・ルパン、はたまたルーク・スカイウォーカーとダース・ベイダーのように。

ところがあっと驚く

ラストのどんでん返し。

ルージュはまさにタイトル通り

“特異点”の彼方へ消え去って行きました。

また、澄馬くんたちからすれば、ルージュという女性は、男たちの証言の中にしか出てきません。

直接会ったことはなく、防犯カメラが写した一枚の写真だけが

存在をほのめかしているに過ぎないのです。

その蜃気楼のような成り立ちが

かえって彼女の存在感を

際立たせているように思います。

マンガはモノクロでしたが、おそらく鮮血を塗りたくったように

真っ赤で肉感的なあの唇に

二度とお目にかかれないと思うと、少し残念でもあります。

また、犯人グループ3人組のうちの一人が

実に良い味を出しています。

名作は、名脇役がいてこそ生まれるのだと

あらためて感じ入った次第です。

良く練り上げられた上質の

ハリウッド映画を観たような

気分にさせてくれる珠玉の一編でした。

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https://kc.kodansha.co.jp/product?item=0000322582 https://www.23notebook.net/motohiro_kato-shinichi_ishizuka/

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