『リリィ、はちみつ色の夏』 私たちは「はちみつ色」の肌をしている。

見終わった後、心の「優しさ度数」が

‘2’目盛りほど上がっているような、あたたかさに満ちた映画でした。

女性作家スー・モンク・キッド

ベストセラーを、新進気鋭の女性監督

ジーナ・プリンス=バイスウッドが映画化。

主役はダコタ・ファニングクイーン・ラティファら、名だたる女優たち。

女性たちによる女性たちのための映画。

男性陣は肩身をせばめて観ましょう。

あらすじ (ネタバレしています!)

1964年。アメリカ、サウスカロライナ州。

リリィ(ダコタ・ファニング)は14歳。

父親のT・レイ(ポール・ベタニー)と二人暮らし。

母親のデボラ(ヒラリー・バートン)は、リリィが4歳の時に亡くなった。

私がママを殺した

と、リリィは思っている。

しかし事実は少しちがう。

リリィが4歳のとき、

父とケンカの絶えなかった母が家出。

数カ月のちに帰ってくる。

そのとき父ともみ合いになり、もっていた拳銃が床に落ち、リリィの前に転がる。

それを渡して

と、母がリリィに手を伸ばす。

リリィが渡そうとした瞬間、拳銃が暴発、母は死亡した──。

それからの10年間、リリィは父に、虐待に近い育てられ方をしてきた。

alt="写真は映画『リリィ、はちみつ色の夏』より、ダコタ・ファニングのアップです。" width="400" height="171" >

リリィは、母が死んで以来、ひとつの疑問をずっと抱きつづけている。

家出した母親は、なんのために帰ってきたのか。

リリィは、 ママは私を迎えてきてくれたんだ

と信じたい。

だが父は

あいつは荷物を取りに来ただけだ

と言う。

時は折しも、公民権運動まっ盛り。

はじめて黒人が選挙権をもつことが認められた。

リリィの家のお手伝いのロザリン

(ジェニファー・ハドソン)は、登録のために、リリィとともに町へ出る。

その途中、二人は白人男たちに絡まれる。

反抗したロザリンは、顔を殴られて入院。

だが殴った白人男のほうはおとがめなし。

ロザリンのほうが警察に拘留される、そんな時代だった。

どこに行こうと、今より悪くなるはずがない

リリィはロザリンをさそい、旅に出る。

よりどころは母の形見、黒いマリアの肖像画の裏に書かれていた住所だ。

「サウスカロライナ州ティブロン」

そこに行けば何かあるかも知れない。

alt="写真は映画『リリィ、はちみつ色の夏』より、ジェニファー・ハドソンとダコタファニングが、それぞれコーラの瓶を持って、道端に並んで座っています。" width="400" height="171" >

二人はヒッチハイクで

ティブロンまでやって来た。

ここから先は何の当てもない。

だが幸運なことに、雑貨屋の店先に、「黒いマリアの蜂蜜」という瓶が陳列されていた。

それは、母の形見の一つと

まったく同じかたちをした瓶だった。

リリィたちは雑貨屋の店主から

製造元の住所を教えてもらい、訪ねていく。

そこは「ピンクハウス」と呼ばれている、文字通りピンクの壁にかこまれた、かなり大きな邸宅兼養蜂工場だった。

工場は、黒人三姉妹が経営しており、彼女らは経済的に不自由のない生活を送っていた。

リリィは思い切って、 汽車賃が貯まるまでここで働かせてください

と頼み込んだ。

長女のオーガスト(クイーン・ラティファ)と

三女のメイ(ソフィー・オコネドー)は

快く迎え入れてくれた。

しかし次女のジューン(アリシア・キーズ)だけは

なぜかリリィを見る目が厳しかった。

リリィたちは蜂蜜工場の小屋に

寝泊まりすることになった。

リリィとロザリンは、三姉妹の心ゆたかな暮らしぶりに

じょじょに癒され、とけこんでいく。

alt="写真は映画『リリィ、はちみつ色の夏』より、ジェニファー・ハドソンとソフィー・オコネドーが手のひらの上に虫を乗せて見つめています。" width="400" height="171" >

ある日のこと、三女のメイが台所の床に

お菓子のかけらを並べていた。

リリィはそれを見ておどろく。

むかし母のデボラも同じことをしていたのだ。

メイと同じく、母のデボラも虫をとても可愛がり、ゴキブリでさえも、お菓子でおびき出して

外に逃がしてあげていた。

デボラという白人女性を知ってる?

とリリィが問う。

知ってるわ

とメイは答えた。

何と、この家の長女オーガストこそは

リリィの母の乳母だった。

10年前、母はオーガストの元に、数ヶ月間、身を寄せていたことも分かった。

次女のジューンがはじめのうち、リリィに敵意を見せていたわけは、

ジューンは、姉のオーガストが白人の乳母を

していたことを「屈辱」と捉えていたからなのだった。

alt="写真は映画『リリィ、はちみつ色の夏』より、アリシア・キーズがチェロを弾いています。" width="400" height="171" >

リリィは、工場で働いている黒人青年

ザック(トリスタン・ワイルズ)とも

仲良くなり、互いに惹かれ合っていく。

ある日、二人はいっしょに映画を見に行く。

そこでザックは白人たちに拉致されてしまう。

当時のアメリカは、黒人男性と白人女性が

白昼堂々デートをするなどというのは

もってのほかだった。

(…これが法によるものなのか、私刑なのかはちょっと分かりません。

ザックが帰ってきたとき、弁護士と

一緒だったので、おそらく前者かと)

ザックが数日間姿を消したことで、とても傷つきやすい心をもっている三女のメイは

悲しみにくれ、とうとう自ら命を絶ってしまう。

のち、ザックは顔中アザだらけになって

警察から帰ってきた。

メイの葬儀も終わり、ピンクハウスでの

日々は静かに日常を取り戻していった。

alt="写真は映画『リリィ、はちみつ色の夏』より、ソフィー・オコネドーがダコタ・ファニングを後ろから抱きしめ、顎をダコタの頭に載せています。" width="400" height="169" >

そんなとき、リリィの父親が

娘を連れ戻しにやってきた。

彼女はかたくなに拒む。

三姉妹もリリィを援護射撃。

充分にケアをしているし、これからは学校へも行かせます

そう言われると、父親は返す言葉もない。

父があきらめて帰る間際、リリィはもう一度父に問う。

ママはあのとき、本当は私を連れ帰るために戻ってきたンじゃないの? それともパパの言うとおり、ただ荷物を取りに来ただけなの?

父親の答えは

ノー

だった。

母親はリリィを連れて帰るつもりだったのだ。

母親に捨てられたのは、リリィではなく父親のほうだった。

父親は去って行った。

母は私を愛してくれていた

リリィが長いあいだ抱えていた

胸のつかえがようやく取れた。

今は、新しい母親とも言える

オーガストたちがいる。

リリィの新しい人生が幕をあけた──。

(おわり)

alt="写真は映画『リリィ、はちみつ色の夏』より、クイーン・ラティファとダコタ・ファニングがミツバチの巣箱の上に頭を乗せています。" width="400" height="169" >

感想。。。

映像が美しいです。

舞台設定は夏ですが、撮影は1~2月に行なわれたそう。

ノースリーブで楽しそうに水浴びしていますが

本当は極寒だったのですね。

白い息が出ないように、いつも氷を口に入れていたのだとか。

そのせいかどうかは分かりませんが、太陽光線がとても柔らかく澄んでいて、逆光を浴びたはちみつの瓶や

ダコタ・ファニングの金髪がとても映えていました。

養蜂家を演じたクイーン・ラティファは

じっさいに素手で蜂の巣箱をあつかったそうです。

蜂をやさしく、愛を込めてゆっくりあつかう。

そうすれば蜂だって刺すことはない。きっとうまくいく──。

というのは、本作のテーマにも通じているように思います。

5人の女性がおだやかな空気の中で

ふくよかに笑いあい、おだやかに過ごしている。

そんな光景を見ているだけで

充分に幸せな気分にひたれました。

本作はDVDで鑑賞しました。

特典映像がとてもていねいに作られています。

監督と女優たちが一堂に会してのコメンタリは、さながら盛り上がっている女子会のようでした。

音楽はマーク・アイシャム

映像と音楽のマッチングも素晴らしく、言うことなしです。

この映画の重要なテーマの一つに「レイシズム」があります。

なかよく並んで映画を観ているリリィとザック。

他の観客の視線が冷たく刺さります。

本作の時代設定は1960年代中ごろですが、

ジーナ・プリンス=バイスウッド監督は

2008年の今でも変わらないわ

と、コメンタリでつぶやいていました。

世間では「白人」「黒人」「黄色人種」という具合に

肌の色を言い表わし、それが完全に定着しています。

しかし本当にそんな色をしているでしょうか。

言葉からくる固定観念でそのように見えているだけで、先入観を取っ払って、あたらめて見てみると、三つの肌の色は、むしろ「はちみつ色」に近いです。

私たち人間はみんな「はちみつ色」の肌をもっている。

色分けして対立するのではなく、同じ場所に肩を並べて立ってみれば、また新しい景色がひらけてくるし、

しっかり分かりあえる──。

この映画はそんなことをも

教えてくれているような気がします。

https://www.youtube.com/watch?v=acxwVw7M5DQ

THE SECRET LIFE OF BEES

監督・脚本: ジーナ・プリンス=バイスウッド 原作: スー・モンク・キッド 音楽: マーク・アイシャム 出演: クイーン・ラティファ ダコタ・ファニング ジェニファー・ハドソン アリシア・キーズ ソフィー・オコネドー ポール・ベタニー ヒラリー・バートン ネイト・パーカー トリスタン・ワイルズ ションドレラ・エイヴリー

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