映画『マルドゥック・スクランブル 圧縮』 | サイバーパンク系美少女アクション。

本作は近未来ハードボイルドです。

首都圏で2010年11月6日に封切りされたのを皮切りに

全国津々浦々で順次公開されました。

小説で予習しておいて正解でした。

(第24回日本SF大賞受賞) あのボリュームを1時間ほどの尺におさめたのですから

かなり密度の濃い内容となっています。

あらすじ。。。

貧富の二極化が激しい都市、マルドゥック(天国の階段)シティ。

15才の高級少女娼婦バロット(林原めぐみ)は

自分の出生を調べようと軽い気持ちで

コンピュータにアクセスしたことで、パトロンであるシェル(中井和哉)に殺されそうになります。

シェルはバロットに偽造IDを与え、そのIDを使って、不正に金を動かしていたので、勝手にアクセスされることは

そのままバロットの死を意味していたのです。

銀行員として登録されているバロットがIDを触る ↓ ただちに不正発覚 ↓ バロットが容疑者とされ、その後死亡(殺害さる) ↓ シェルは安泰 ということだと解釈しています。 (間違っているかもしれません)

このシェルという人物は過去に6人の少女を

葬り去っていますが、その記憶を持っていません。

都合の悪い記憶だけを、脳から取り出し、削除しておくことができるのです。

そのシェルを以前からマークしていた

雇われ事件担当官ドクター・イースター

(東地宏樹)とウフコック(八嶋智人)は、間一髪のところでバロットを救出します。

生死の境をさまよった末、命を取り留めたバロットは

シェルの悪事を暴こうとする彼らに

全面的に協力することになるのですが……

バロットの強力な味方であり武器となるのが、ウフコック。

普段はネズミの格好をしています。

時と場合により、ラジオになったり、洋服になったり、マシンガンになったり……要するに何にでもなれるわけです。

シェルの用心棒であるボイルド(磯部勉)は、むかしウフコックとコンビを組んでいましたが、なにやらワケアリで解消したもよう。

ボイルドはシェルの命令でバロットを殺そうとし、ウフコックは命がけで守るという、相対する立場です。

このへん、ボイルドは外見に似合わず、バロットに嫉妬していたりしてちょっと可愛いです。

オレのウフコックと仲良くするな、という感じでしょうか。

ウフコックのほうも、むかしのバディ、ボイルドに対する

引け目のような気持ちをもっています。

ウフコックとドクター・イースターの二人

というか、一人と一匹は、自らの有用性をアピールし続けなければ、ムショ行きか、もしくは廃棄処分されるという状況。

バロットはバロットで「なぜ、あたし?」が口癖。

娼婦として見そめられても「なぜ、あたし?」だし、殺されそうになっても「なぜ、あたし?」と悩みます。

ですら、この物語はそれぞれのアイデンティティを

獲得するための戦いを描いたものであるといえるでしょう。

そうは言っても、ウフコックとドクターは

手に職を持っている上、すでに揺るぎない自我を

獲得しているので、やはりバロットの物語ですね。

第1部の最後の言葉(全三部作のようです)……

ボイルド

「俺たちは虚無を産み出すために作られた。ウフコック」

この言葉はそのままバロットの心をえぐります。

果たして、バロットは虚無を生みだすだけの

しがない存在なのでしょうか。

バロットという名前には、『孵化直前のアヒルの卵を加熱したゆで卵』

という意味があります。

“食される者”で終わってしまうのか。

ゆであがる前に、殻をぶち破り、再生への道を

歩むことができるのか。

本田美奈子さんの 『アヴェ・マリア for Balot』

に耳を傾けながら、第2弾の反撃に期待しましょう。

感想。

映像的な見どころは、何といっても

バロットのガンアクションです。

ウフコックと心身ともに一体となって撃ちまくる姿は

格式高い舞踏を見ているかのようでした。

そしてマルドゥック・シティの夜景が美しいです。

現代の日本より、いっそう格差社会が先鋭化された世界。

その中心にそびえたつ塔は、近未来版サグラダファミリアさながら。

血塗られた記憶を捨て去りながら、支配者への階段を一気に駆け上がろうとするシェルが

向かう先は、果たして天国と呼ぶに

ふわしい場所なのでしょうか……。