“彼女の名誉を守れ”「C.M.B.『気の合わないヤツ』」加藤元浩・著(月マガ2019年9月号)感想

月刊少年マガジン2019年9月号が発売されました。

加藤元浩先生の傑作ワールドワイド・ミステリ 「C.M.B. 森羅博物館の事件目録」も絶賛連載中です。

今月のタイトルは

“Op142: 気の合わないヤツ Incompatible Guy”

さっそくあらすじを見ていきましょう。

イラクの砂漠で遺跡の発掘調査が行なわれています。

紀元前7世紀頃のものと思われる未盗掘の貴重なお墓が発見されたため、榊森羅(さかき・しんら)くんと 七瀬立樹(ななせ・たつき)ちゃんがはるばる日本から呼ばれました。

森羅くんは現役高校生ながら、大英博物館からお墨付きをいただく、世界に名だたる「知」の守護者です。

その森羅くんに何かと突っかかっていくのが、ムラトというクルド人の少年。

森羅くんと同年代か、あるいは年下のようにも見えます。

ムラトが森羅くんを嫌うのにとくに理由はありません。

ただ“気の合わないヤツ Incompatible Guy”ということのようです。

発掘隊のテントの中にひとりの女性が隠れていました。

彼女の名はサルマー。

18歳の美しい人です。

養い親である伯父が強引に結婚を決めたため家を飛び出してきたのです。

この地方で女性が結婚を拒否することは文字通り“命がけ”の行為となります。

強制結婚を断わった者は「名誉殺人」の対象となるのです。

「名誉殺人」とは「家族の名誉を汚した者は 死を持って償わねばならない」ということです。

結婚を拒んだだけで殺されなければならず、しかもそれは合法なのです。

※ 追記 (2019年8月10日) 名誉殺人は合法ではありません。
殺人罪が適用されます。しかし地域によって未だに因習が根強く残っており、量刑が軽減されることがあるようです。
よく調べもせずに無責任な記事を書いてしまい、加藤元浩先生、並びに関係者の方々に多大なご迷惑をおかけしたことをこの場を借りて深くお詫び申し上げます。

参考記事:

名誉の殺人 - Wikipedia

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%90%8D%E8%AA%89%E3%81%AE%E6%AE%BA%E4%BA%BA

スウェーデンを悩ます「名誉殺人」とは何か:内海夏子 | 記事 | 新潮社 Foresight(フォーサイト)

https://b.hatena.ne.jp/entry/s/www.fsight.jp/4895

なんとかサルマーを助けようと森羅くんたちは知恵を絞ります。

しかしその姿を横目にムラト少年だけ非協力的なのが気になるところ。

地元にどっぷり浸かって育ったムラトはサルマーの伯父たちとも顔見知りです。

「女性は親の望むところへ嫁がねばならない」ことに特に疑問を抱いていないのでしょうか。

サルマーにとっての不幸中の幸いは、イラク国籍だけでなく、フランス国籍も持っていることでした。

フランス側が受け入れてくれれば、サルマーはイラクを脱出できます。

フランス大使館に相談すると、答えは「可能です」

女性たちが「強制結婚」や「名誉殺人」など、前時代的な悪習の犠牲になっているのを、他国としても目をつぶっているわけにはいかない。 できる限り救援の手を差し伸べよう。

というのが世界の「今」の動きです。

ところが肝腎のパスポートとIDカードが見つかりません。

伯父が隠してしまったのです。

親戚中がサルマーの敵となっている中、果たしてサルマーはパスポートを奪い返せるのでしょうか。

さらに監視の目をくぐって、飛行機に乗り込むことが出来るのか。

森羅くんたちによる“サルマー救出作戦”が開始されました──。

感想。。。

国を持たない3000万の民、クルド人。

映画『ゴッドファーザー』のように一族の結束を重んじるのはやむを得ないことなのかも知れません。

サルマーに強制結婚を勧める伯父も、本人はよかれと思ってしていることなのです。

その一方で、自分たちがしていることが絶対に正しいとも思えなくなってきているのも事実。

今までなんの疑問もなく抱いていた価値観が、ここにきて大きく揺らいでいるのは、ムラト少年も同じこと。

これから先、何をよすがに生きていけばいいのか、せめぎ合いはまだまだ続くことでしょう。

世界を自在に泳いでいる森羅くんについいらだってしまうのは、そんなところにも原因の一端があるのかも知れません。

加藤元浩先生、今月も素晴らしい作品を届けて下さりまことにありがとうございます!

〈加藤元浩先生 関連記事〉

「C.M.B. 森羅博物館の事件目録」シリーズ

マウ、森羅にすがる。加藤元浩・著「C.M.B. -カメオグラス-」月マガ2019年12月号感想

加藤元浩・著「C.M.B. 森羅博物館の事件目録」42巻「月下美人」感想

幸せは香りを放つ。「C.M.B.『歯医者』」加藤元浩・著(月マガ2019年11月号)感想

ガラスの地球が壊れる前に。「C.M.B.『透明魚』」加藤元浩・著(月マガ2019年10月号)

“彼女の名誉を守れ”「C.M.B.『気の合わないヤツ』」加藤元浩・著(月マガ2019年9月号)感想

泥の中に咲く蓮。「C.M.B. 森羅博物館の事件目録」‘死体がない!’ 加藤元浩・著

蛇行する“石”の謎。「C.M.B. 森羅博物館の事件目録」第41巻 加藤元浩・著

超弩級の連作短篇マンガ「C.M.B.森羅博物館の事件目録」加藤元浩・著

「Q.E.D. 証明終了」シリーズ

山伏村殺人行。加藤元浩・著『その世界』「Q.E.D. iff」(マガジンR2019年6号)

加藤元浩・著「Q.E.D. 証明終了」のアソビ部分を集めてみました。

復讐はショパンの調べ。「1億円と旅する男」感想「Q.E.D. iff -証明終了-」加藤元浩・著

美しい思い出だけを。「メモリ」感想「Q.E.D. iff -証明終了-」加藤元浩・著

女盗賊“ルージュ”の完全犯罪。「Q.E.D. iff -証明終了-」第13巻。加藤元浩・著

面白マンガ6冊。「Q.E.D.」加藤元浩、「ブルー・ジャイアント」石塚真一、他。

「捕まえたもん勝ち!」シリーズ

七夕菊乃 in コミックス「Q.E.D. iff」&「C.M.B.」加藤元浩・著

“あの人”に贈る殺人。「奇科学島の記憶 捕まえたもん勝ち!3」加藤元浩・著

七夕菊乃vs.量子人間「捕まえたもん勝ち!2」加藤元浩・著

顔はアイドル、武器はめげない気持ち。「捕まえたもん勝ち!」加藤元浩・著