不世出の天才打者。落合博満・著「なんと言われようとオレ流さ」

なんと言われようとオレ流さ

上の写真は、落合博満選手の中の“鬼”が顔を覗かせた瞬間。

いつも泰然としている落合さん。

試合中でさえ、こんな鬼気迫る表情は

めったに見せませんでした。

貴重な瞬間です。

二十歳過ぎまで自由気ままに生きてきた野武士は、日本プロ野球界をおのれの死に場所と定めました。

信子さんというたぐいまれなる

“女傑”と出会えたことも幸運でした。

グラウンドでは相手を斬りまくり、球場の外では“野球とは何か”を考えぬき、契約更改の場でも戦いつづけました。

野武士は武士となり、武士はいつしか武将となり、ついには日本一の戦国大名として

その名をとどろかせるに至ります。

本書が刊行されたのは34年前。

“オレ流”を貫きとおした男は、この頃からすでに免許皆伝、唯一無二の“超一流”の男でした。

(以下、引用です)

はじめに

以前、飲みに行ったとき、ホステスさんがこう言ったことがある。

「私、このお仕事をはじめて間がないんです。なにかと至らないところがあるとは思いますけど、大目に見てやってくださいね」

冗談でしょう! 他人からお金をもらっておきながら、そりゃあない。プロはプロ、一年目も十年目も条件は一緒だ。世の中、それこそ子供と学生以外の人間は、みんなプロ意識を持ってなきゃおかしい。

なんと言われようとオレ流さ (落合博満 講談社)

なぜ一億円にこだわらなかったか?

もちろん、あれだけ一億、一億と騒いでいたんだから、一億円に対するこだわりがなかったと言えばウソになる。さらにもし、オレが「あと三百万」と言えば、それくらいの額は出たかもしれない。 でも、もうひとつの理由が、オレを「これでいいや」という気持ちにさせていた。 それはねたみだ、ねたみ。家の塀に落書きされるわ、イタズラ電話をかけられるわ、脅迫の手紙はくるわで、もういやがらせが多いのさ。オレはどうでもよくても、家にいるカミさんがかわいそうだ。だから、あえて退いたわけ。 カミさんと話をして、「それだったら一億いかなくたっていいんじゃないの」ということになった。あいつさえよければ、オレはどうでもいいの。別に食っていけないわけでもないし、面倒になったんだ。 九千万円でも一億円でもごっそりと税金でもっていかれたら同じ。第一、一億なんて、早いか遅いかだけの話だ。

なんと言われようとオレ流さ (落合博満 講談社)

バックスクリーンが見えたらおしまいだ

バッターボックスに入ったら、オレはピッチャーの手だけを目で追うことにしている。右ピッチャーなら右手、左ピッチャーなら左手。 ばくぜんとピッチャーを見ないで、その一点に集中する。ピッチャーがグラブをポンポンとたたくときも腕を前後に大きく回すときも、ずっと見続ける。投球モーションを起こしてボールが手から離れるまで一点に集中。それだけでいい。

なんと言われようとオレ流さ (落合博満 講談社)

今日もオレの野球は変化している

「これを教えたら最後、アイツ、メチャメチャ、自分のライバルになるんじゃないか」

という発想は、オレには全然ない。別に今の考え方がオレの財産だとは思っていないからね。 たとえば、誰かがオレのやり方を完璧にマスターしたとする。それでも、怖いとは思わない。むしろ歓迎だ。結局、自分がうまくなろうと思ったら、全体のレベルを上げるのがいちばんいいんだから。

なんと言われようとオレ流さ (落合博満 講談社)

たかが野球、されど野球。

ほんとうにたかが野球さ。メシ食うための一つの手段だもの。でも、他人よりいいものを食おうと思えば、それだけ多く考えなければいかんわけだ。

なんと言われようとオレ流さ (落合博満 講談社)

オレのやり方を認めてもらって本望だ!

一方、金田(正一)さんは金田さんで、オレがオールスター戦にはじめて出たとき(昭和56年 (1981))に、読売テレビの解説で、「落合はすばらしい」と見直してくれたそうだ。 かつて絶対通用しないと言われた選手がほめてもらえるようになったのだからうれしいね。

なんと言われようとオレ流さ (落合博満 講談社)

特別手記 “落合博満”と私 落合信子

いつか水だけを飲む日が来ても

主人に感心させられることがあります。 それは、来客があったとき、帰りは必ず門の外までお客様をお送りする心遣いです。特に、うちは道路より一段高いところにありますから、上からお送りするのではあまりにも失礼です。 玄関のドアの中から、「お気をつけて」では当たり前。もちろん、私だけが道路の外まで送っても当たり前の話。一家の主である落合本人が、玄関のドアを開けて階段を下りて道路まで送ってこそ意義があり、人様に喜ばれると思うのです。

なんと言われようとオレ流さ (落合博満 講談社)

私は満足しません

こと野球に関しては、頑固がユニホーム着て歩いているような主人にでも、私は思ったことをズバッと言ってやります。たとえば三振です。ある日、テレビで主人が見逃しの三振をしたのを見て、すかさずこう言ったのです。

「煮えきらない人ね。打てなくてもいいから、振るだけ振ったらどうなの?」

それからというもの、見逃しをする機会がずいぶん少なくなりました。 (中略) それに空振りならまだ気持ちがいいんです。私がいちばんイヤなのは、自分で見逃しておきながら帰り際に審判をつかまえて、「今の、ほんとうにストライク?」と聞く人。あんなの男じゃないと思いません?

なんと言われようとオレ流さ (落合博満 講談社)

落合博満ロッテ時代のHRの映像(1985,1986)

https://www.youtube.com/watch?v=6N2-oHuszmc