さよなら、ありがとう森川信さん。『男はつらいよ 寅次郎恋歌』08作目(1971)

本作は喜劇俳優・森川信さんの最後の『寅さん』出演となりました。

(もりかわ しん 1912年2月14日 - 1972年3月26日)

映像の中ではとても元気そうに見えるので、本当に信じられない思いです。

山田洋次監督を始め、「とらや」の皆さんはさぞかし無念だったことでしょう。

そして2018年の現在、本作の出演者で、すでに鬼籍に入られた方が、森川氏以外にも少なからずおられます。

渥美清さん、笠智衆さん、三崎千恵子さん、太宰久雄さん、吉田義夫さん、本作のゲスト、志村喬さん、穂積隆信さん、池内淳子さん……。

しかし御本人は亡くなられても、演じた役は映像の中に生き続けます。

私たちは会いたいと思えばいつでも寅さんや森川おいちゃんたちに会えるのです。

そして若い人々と寅さん映画との新たな出会いは、これからも至るところで起こりつづける──。

そう自分に言いきかせることで、心のなぐさめにしたいと思います。

では、あの懐かしい笑顔に会いに「とらや」の暖簾をくぐってみましょう。

あらすじ (ネタバレあります!)

旅先で雨にたたられ商売にならずくさくさしている我らが寅さん(渥美清)。

どさ回りの芝居を冷やかしに行ったが、劇団のほうもまったく客が入らず休演中だった。

一座の座長、坂東鶴八郎(吉田義夫)と一座のスター、大空小百合(岡本茉利)を元気づけて、さらにご祝儀まで握らせる寅さん。

間違って大きいほうのお札を渡してしまうがそれもご愛敬。

「とらや」ではさくら(倍賞千恵子)が泣いていた。

近所の人が、お兄ちゃん(=寅さん)をバカにするのを小耳に挟んでしまったのだ。

おいちゃん(森川信)とおばちゃん(三崎千恵子)は

「なんにも悪いことしてないのにねえ」

と、さくらに同情する。

「今度、寅が帰ってきたら心から歓迎してやろう」

ということで意見が一致。

そこへタイミング良く帰ってくる寅さん。

しかし、いつもとは違う歓待振りに、かえってヘソを曲げ、出て行ってしまう。

夜、寅さんが知り合いを連れて帰ってきた。

すでにかなり酔っている。

近所迷惑もかえりみず、どんちゃん騒ぎ。

「さくら、なにか景気づけに歌でも歌え」

と言い出す。

さくらは歌い出す。「母さんのうた」を。

しんみりする一同。

寅さん、さくらの気持ちが伝わったか、すっかり毒気を抜かれた。

寅さんの義弟にあたる博(前田吟)は、岡山の母が病気で亡くなったとの連絡を受け、すぐに妻のさくらと連れだって、実家に駆けつける。

父親の飈一郎(ひょういちろう = 志村喬)はかなり落ち込んでいた。

通夜の席、久々に集まった兄弟たち。

「母の一生は幸せだった」

と兄たちが話していると、末弟の博が激しく反発する。

母は若いころ、博に夢を打ち明けたことがあったのだ。

本当は外国を船で回るような一生を送ってみたかった、と。

しかし、その母が長男(梅野泰靖)には、

「幸せな一生だったよ」

と言い残し、それが最期の言葉となった。

「お母さんがなんで幸せなものか」

そう言い放った末っ子の博の言葉にいたたまれなくなった父は、席を立ってしまった。

翌日。葬式に突然寅さんが現れた。

さくら(倍賞千恵子)と博はビックリ。

いつもの腹巻きにだぼシャツ姿。

見かねた親戚がモーニングを貸してくれた。

が、ますます場にそぐわなくなっていく。

さらにいろいろひんしゅくを買いまくる寅さんであった。

博たちは柴又に戻った。

さくらが様子うかがいに飈一郎に電話をしてみる。

受話器から聞こえてきたのは、なんと寅さんの声。

あのまま居着いてしまったらしい。

これも寅さん流の思いやりか。

寅さんと飈一郎氏、けっこう通じるものがあるようだ。

飈一郎氏は数年前の出来事を話しはじめる。

旅先で通りかかった一軒の家。

庭にりんどうの花が咲くその家の、何のことはない団らんを耳にした飈一郎氏。

その時なぜか、わけの分からない涙があふれ出してきて仕方がなかったという。

「人間は絶対に一人じゃ生きていけない」

「運命に逆らっちゃいかん」

飈一郎の言葉にえらく打たれた様子の寅さん。

翌朝、寅さんの姿はなかった。

机の上の原稿用紙に別れの言葉と、りんどうの花が一輪そえてあった。

柴又に新しく喫茶店ができた。

店主の貴子(池内淳子)が、とらやに挨拶回りにやってくる。

あまりの美しさに、恐れおののくおいちゃん。

寅さんが帰ってきたら、ひと騒動もちあがるに決まっている。

見計らったように帰ってくる寅さん。

貴子には小学生の息子がいた。

転校したばかりで一人ぼっち、見かねた寅さんが助け船を出す。

おかげで同級生たちとなじむことができ、息子はすっかり明るくなった

心から寅さんに感謝する母の貴子。

寅さんはすっかり喫茶店の常連になってしまった。

飈一郎が上京してきた。

「とらや」で寅さんと再会。

しかしいいことばかりは続かない。

貴子は悪徳不動産に引っ掛かってしまったようだ。

それを図らずも耳にしてしまった寅さんは、体を張って彼女を助けようとする。

貴子は寅さんのあたたかい言葉に涙ぐみながらも、ひとりでがんばってみると言う。

「寅さんのように旅をして暮らしてみたい‥‥」

そう言ってくれた貴子だが、彼女はこれから柴又にしっかり根を張って生きていこうという人。

りんどうの花の咲く庭にかこまれた暮らしを送る人だ。

それを垣根越しに眺めるだけで中には入っていかない人、根無し草の寅さんはひとり、旅へ出るのだった。

(終わり)

※「かあさんの歌」のリンクは、山岸勝榮明海大学名誉教授・応用言語学博士より承諾を得たものです。

山岸先生、ありがとうございます!

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※ 本記事の英語版です。(画像は別のものを貼っています)

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男はつらいよシリーズ - 極私的星取り表

No.01 ★★★★☆

男はつらいよ (光本幸子、志村喬、広川太一郎)

No.02 ★★★☆☆

続・男はつらいよ (佐藤オリエ、東野英治郎、ミヤコ蝶々、山崎努)

No.03 ★★☆☆☆

男はつらいよ フーテンの寅 (新珠三千代、香山美子、河原崎建三、花沢徳衛)

No.04 ★★☆☆☆

新・男はつらいよ (栗原小巻、財津一郎、三島雅夫、横内正)

No.05 ★★★★☆

男はつらいよ 望郷篇 (長山藍子、杉山とく子、井川比佐志、松山省二)

No.06 ★★★☆☆

男はつらいよ 純情篇 (若尾文子、森繁久彌、宮本信子、垂水悟郎)

No.07 ★★☆☆☆

男はつらいよ 奮闘篇 (榊原るみ、ミヤコ蝶々、田中邦衛、柳家小さん)

No.08 ★★★★☆

男はつらいよ 寅次郎恋歌 (池内淳子、吉田義夫、岡本茉利、志村喬)

No.09 ★★★★★

男はつらいよ 柴又慕情 (吉永小百合、宮口精二、佐山俊二)

No.10 ★★☆☆☆

男はつらいよ 寅次郎夢枕 (八千草薫、田中絹代、米倉斉加年)

No.11 ★★★★☆

男はつらいよ 寅次郎忘れな草 (浅丘ルリ子、織本順吉、毒蝮三太夫)

No.12 ★★★☆☆

男はつらいよ 私の寅さん (岸惠子、前田武彦、津川雅彦)

No.13 ★★★★★

男はつらいよ 寅次郎恋やつれ (吉永小百合、高田敏江、宮口精二)

No.14 ★★☆☆☆

男はつらいよ 寅次郎子守唄 (十朱幸代、月亭八方、春川ますみ、上條恒彦)

No.15 ★★★★☆

男はつらいよ 寅次郎相合い傘 (浅丘ルリ子、船越英二)

No.16 ★★☆☆☆

男はつらいよ 葛飾立志篇 (樫山文枝、桜田淳子、米倉斉加年、大滝秀治、小林桂樹)

No.17 ★★★★★

男はつらいよ 寅次郎夕焼け小焼け (太地喜和子、宇野重吉、岡田嘉子)

No.18 ★★★☆☆

男はつらいよ 寅次郎純情詩集 (京マチ子、檀ふみ、浦辺粂子)

No.19 ★★★☆☆

男はつらいよ 寅次郎と殿様 (真野響子、嵐寛寿郎、三木のり平、平田昭彦)

No.20 ★★★☆☆

男はつらいよ 寅次郎頑張れ! (藤村志保、中村雅俊、大竹しのぶ)

No.21 ★☆☆☆☆

男はつらいよ 寅次郎わが道をゆく (木の実ナナ、武田鉄矢、竜雷太)

No.22 ★★★★☆

男はつらいよ 噂の寅次郎 (大原麗子、室田日出男、泉ピン子、志村喬)

No.23 ★★★★☆

男はつらいよ 翔んでる寅次郎 (桃井かおり、湯原昌幸、布施明、木暮実千代)

No.24 ★★☆☆☆

男はつらいよ 寅次郎春の夢 (香川京子、ハーブ・エデルマン、林寛子)

No.25 ※※※※※ 男はつらいよ 寅次郎ハイビスカスの花 (浅丘ルリ子、江藤潤)

No.26 ★★★☆☆

男はつらいよ 寅次郎かもめ歌 (伊藤蘭、松村達雄、村田雄浩)

No.27 ★★★☆☆

男はつらいよ 浪花の恋の寅次郎 (松坂慶子、芦屋雁之助)

No.28 ★★★☆☆

男はつらいよ 寅次郎紙風船 (音無美紀子、地井武男、岸本加世子、小沢昭一)

No.29 ★★☆☆☆

男はつらいよ 寅次郎あじさいの恋 (いしだあゆみ、片岡仁左衛門)

No.30 ★★★☆☆

男はつらいよ 花も嵐も寅次郎 (田中裕子、沢田研二、朝丘雪路)

No.31 ★★★☆☆

男はつらいよ 旅と女と寅次郎 (都はるみ、北林谷栄、中北千枝子、藤岡琢也)

No.32 ★★★★★

男はつらいよ 口笛を吹く寅次郎 (竹下景子、松村達雄、中井貴一、杉田かおる)

No.33 ★★★☆☆

男はつらいよ 夜霧にむせぶ寅次郎 (中原理恵、渡瀬恒彦、佐藤B作、秋野太作)

No.34 ★★☆☆☆

男はつらいよ 寅次郎真実一路 (大原麗子、米倉斉加年、風見章子、津島恵子、辰巳柳太郎)

No.35 ★★☆☆☆

男はつらいよ 寅次郎恋愛塾 (樋口可南子、平田満、初井言榮)

No.36 ★★★★☆

男はつらいよ 柴又より愛をこめて (栗原小巻、川谷拓三)

No.37 ★☆☆☆☆

男はつらいよ 幸福の青い鳥 (志穂美悦子、長渕剛、桜井センリ)

No.38 ★★★★☆

男はつらいよ 知床慕情 (竹下景子、三船敏郎、淡路恵子)

No.39 ★★☆☆☆

男はつらいよ 寅次郎物語 (秋吉久美子、五月みどり、河内桃子)

No.40 ★★★★☆

男はつらいよ 寅次郎サラダ記念日 (三田佳子、三田寛子、尾美としのり、鈴木光枝)

No.41 ★★☆☆☆

男はつらいよ 寅次郎心の旅路 (竹下景子、淡路恵子、柄本明)

No.42 ★☆☆☆☆

男はつらいよ ぼくの伯父さん (後藤久美子、檀ふみ、夏木マリ、尾藤イサオ)

No.43 ★★★★☆

男はつらいよ 寅次郎の休日 (後藤久美子、夏木マリ、寺尾聰、宮崎美子)

No.44 ★★★☆☆

男はつらいよ 寅次郎の告白 (後藤久美子、吉田日出子、夏木マリ)

No.45 ★★★★★

男はつらいよ 寅次郎の青春 (後藤久美子、風吹ジュン、永瀬正敏、夏木マリ)

No.46 ★★★☆☆

男はつらいよ 寅次郎の縁談 (城山美佳子、松坂慶子、島田正吾、光本幸子)

No.47 ★★★★☆

男はつらいよ 拝啓車寅次郎様 (牧瀬里穂、かたせ梨乃、小林幸子)

No.48 ★★☆☆☆

男はつらいよ 寅次郎紅の花 (後藤久美子、浅丘ルリ子、夏木マリ、田中邦衛、村山富市、宮川大助・花子)

特別編 [1997.11.22] ★★★★☆

男はつらいよ 寅次郎ハイビスカスの花 特別篇 (浅丘ルリ子、江藤潤)

TV版 ★★★☆☆

テレビドラマ版 男はつらいよ

番外編

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