渥美清と森繁久彌の貴重なコラボ。『男はつらいよ 純情篇』06作目(1971)

マドンナ = 若尾文子

ゲスト = 森繁久彌

今回一番爆笑させられたのは次の場面でした。

※ いきなりネタバレあります!

病気の若尾文子の往診にやってきた松村達雄を見て

おいちゃん、大丈夫かね。 どうも何だかたよりねえな、あの医者は。 大丈夫だよ。 あの先生はちょっとでも自信がねえとすぐほかの医者を紹介するんだ。 その点じゃあ信用していいよ。 あらすじ

テレビ番組「ふるさとの川 江戸川」。

今回は柴又特集。

「とらや」ファミリーの面々は、知り合いや自分たちが映るたびに

大はしゃぎです。

その番組を、山口県の小さな食堂で見ていた

我らが寅さん(渥美清)。

急にふるさとが懐かしくなり、公衆電話に取り付きます。

しかし当時の公衆電話は10円玉しか受け付けません。

十分に話せずじまいで欲求不満が残りました。

港の桟橋で、これからどこへ行こうか思案に暮れていると、赤ん坊をおぶった女(宮本信子)が目に入りました。

軽く挨拶し、去ろうとする寅さんに、女は突然

今晩泊まるための お金を貸してほしい

と切り出します。

いっしょに安宿に泊まることになった寅さんと母子。

寅さんのことですから、一切手出しはありません。

女は絹代と言いました。

3年前に男と駆け落ち、故郷の山口を後にしました。

その後、男がギャンブルと暴力に狂い、たまらず逃げ出してきたのだと言います。

それでふるさとに戻ってきたわけですが、ここまできて実家に顔を出す勇気がどうしても出ません。

優しい寅さんは付き添ってあげることにします。

実家は小さな旅館でした。

ここで森繁久彌登場!

渥美清とのアドリブ合戦が観られるかと思ったのですが、お二方ともなぜかおとなしめ。。。

父親の千造(森繁久彌)は、意外なことを口にします。

DV男の元に帰れというのです。

夫の良いところを見つけ、そこを伸ばしてやるのが妻の役目だ 老い先短い自分がこの世を去れば、おまえたちに故郷はなくなるのだから

と。

それをはたで聞いていた寅さん、ますます望郷の念を募らせるのでした。

……ところで渥美清は先輩・森繁を非常に尊敬していたそうです。

文化放送公式ブログ「みんなの寅さん」に、佐藤利明氏のこのような文がありました。

引用させていただきます。

山田洋次監督から、先日お伺いしました。 その尊敬する森繁さんを「男はつらいよ」のゲストに招いた時の渥美清さんの感激は、想像するしかありませんが、冒頭に引用した、二人の天才俳優の芝居場は、シリーズの中でも白眉の一つです。

みんなの寅さん (文化放送)

故郷(くに)はどこかな

と、千造に聞かれた寅さん。

故郷かい? 故郷はよ……東京は葛飾の柴又よ!!

このときの誇らしげな表情がたまらなく良いです。

そのころ「とらや」では、おばちゃん(三崎千恵子)の遠縁の夕子(若尾文子)が

寅さんの部屋を借りて住んでいました。

……遠縁といっても

「従姉妹の夫の姪」では、ほとんど他人です(笑)。

寅さんが帰ってきたとしても居場所がないわけですが、こんなときにかぎって帰ってくるのが寅さん。

やっぱり帰ってきました。

あんなに故郷に恋いこがれていたのに、中に入りづらそうなところが泣けます。

おまえの部屋、人に貸しちゃったんだよ

と、おいちゃん(森川信)に言われたときの

悲しそうな表情がたまりません。

いつものようにひねくれる寅さんでしたが、夕子を見たとたんシャキーンとなり、テンションもマックスに(笑)。

しかし、つまらないことから寅さんとおいちゃんが大げんか。

さくら(倍賞千恵子)が怒って出て行ってしまいます。

後を追いかけて必死になだめる寅さんでした。

おいちゃんおばちゃんが一生懸命つくっているお団子を

「鼻くそ団子」と言われては、怒って当然です。

さくらは巻いていたマフラーで涙をぬぐいます。

(これがちょっとした伏線です)

その頃、さくらの夫・博(前田吟)は独立を考えていました。

新型の機械さえ買えれば、長年の夢はかないます。

しかし今まで良くしてくれたタコ社長の恩に充分に報いたのかどうか、また、仲間を裏切るような後ろめたさもあります。

そしてなによりも現金80万円を

用意しなければなりません。

父親の退職金だけが目当てなのですが……。

その話を聞いた寅さん。

https://www.23notebook.net/wp-content/uploads/2019/06/551426a460c9b38d2c4a508d710ae694.png" 人生は賭けだと? ……おめえ、いいこと言うじゃねえか。 よし、今やめろ、すぐやめろ、オレが掛け合ってやる!

と、威勢良く

タコ社長の家に乗り込んでいきます。

独立の噂をすでに耳にしていた

タコ社長(太宰久雄)はパニック状態でした。

今、博さんにやめられたら一家心中だよぉ

と逆に寅さんに泣きつきます。

狭い家をところ狭しと駆け回る子供たちを見てしまっては

さすがの寅さんも何も言えません。

こんどはタコ社長のほうから、博を慰留する役目を仰せつかってしまいます。

板挟みになった寅さん。

もうお手上げです。

のらりくらりの軟体動物になるしかありません。

ところがそのうち、タコ社長と博のどちらも、自分のほうの言い分が通ったと思い込んだまま、両者めでたく手打ちの大宴会が始まってしまいます。

ここまできてようやく

何一つ解決していないことが明るみに出ました。

寅さん、話がぜんぜん違うじゃないか!

窮地に立たされる寅さん。

が、じつはすでに博は

父親から借金の申し出を断わられていました。

博が独立をあきらめたことで、事態はいちおう収まりました。

その後、寅さんは恋の病で寝込んでしまいます。

しかし夕子の

散歩に連れて行ってほしかった

の一言で急に回復(笑)。

ふたりで散歩に出かけます。

寅さんにとってはデートのつもりでも、夕子の思惑はちがったようです。

夕子は遠回しに、自分をあきらめてほしい旨を伝えます。

でも、超ポジティブ・モードの寅さんにはまったく通じません。

その後、「とらや」に夕子の夫が現れます。

夕子は夫に連れられ、去って行きました。

寅さんの恋はあっけなく終わりをむかえたのでした。 夜の柴又駅。

旅立つ寅さんを見送るさくら。

寅さんにマフラーをかけてやります。

さくらの涙が染みこんだ、あのマフラーです。

「故郷ってやつぁよぉ……」

寅さんがそう言い掛けたとき、電車の扉が閉まります。

遠くなっていく電車をいつまでも見送るさくらでした。

新しい年が明けました。

「とらや」にさっそくのお客さんです。

以前、寅さんにお金を貸してほしいと頼んだ絹代と

彼女の夫が挨拶に来たのです。

夫はすっかり立ち直ったようです。

「とらや」ファミリーに促され、絹代はその場で故郷の父親に電話します。

幸せそうな娘の声を聞き、森繁父さんの顔は涙でぐしょぐしょです。

その傍らに、寅さんからの年賀状がありました。

その寅さんは静岡県浜名湖畔にいます。

横には源吉のうれしそうな顔が。

ここがかき入れ時とばかりに

威勢良くバイをする寅さん。

美声に聞きほれる初詣客たち。

正月の青空に溶けていくハリセンの音。

今年もいい年であることを請け合って

机上に首を並べた鶴亀たちが

いっせいにうなずきあっています。。。

監督:山田洋次

脚本:山田洋次、宮崎晃

音楽:山本直純

キャスト

車寅次郎:渥美清 明石夕子:若尾文子 さくら:倍賞千恵子 諏訪博:前田吟 車つね:三崎千恵子 たこ社長:太宰久雄 源公:佐藤蛾次郎 絹代:宮本信子 山下医師:松村達雄 夕子の夫:垂水悟郎 満男:中村はやと たこ社長の妻:水木涼子 旅館の女中:谷よしの 車竜造:森川信 御前様:笠智衆 千造:森繁久弥

<男はつらいよシリーズ - 極私的星取り表>

No.01 ★★★★☆

男はつらいよ (光本幸子、志村喬、広川太一郎)

No.02 ★★★☆☆

続・男はつらいよ (佐藤オリエ、東野英治郎、ミヤコ蝶々、山崎努)

No.03 ★★☆☆☆

男はつらいよ フーテンの寅 (新珠三千代、香山美子、河原崎建三、花沢徳衛)

No.04 ★★☆☆☆

新・男はつらいよ (栗原小巻、財津一郎、三島雅夫、横内正)

No.05 ★★★★☆

男はつらいよ 望郷篇 (長山藍子、杉山とく子、井川比佐志、松山省二)

No.06 ★★★☆☆

男はつらいよ 純情篇 (若尾文子、森繁久彌、宮本信子、垂水悟郎)

No.07 ★★☆☆☆

男はつらいよ 奮闘篇 (榊原るみ、ミヤコ蝶々、田中邦衛、柳家小さん)

No.08 ★★★★☆

男はつらいよ 寅次郎恋歌 (池内淳子、吉田義夫、岡本茉利、志村喬)

No.09 ★★★★★

男はつらいよ 柴又慕情 (吉永小百合、宮口精二、佐山俊二)

No.10 ★★☆☆☆

男はつらいよ 寅次郎夢枕 (八千草薫、田中絹代、米倉斉加年)

No.11 ★★★★☆

男はつらいよ 寅次郎忘れな草 (浅丘ルリ子、織本順吉、毒蝮三太夫)

No.12 ★★★☆☆

男はつらいよ 私の寅さん (岸惠子、前田武彦、津川雅彦)

No.13 ★★★★★

男はつらいよ 寅次郎恋やつれ (吉永小百合、高田敏江、宮口精二)

No.14 ★★☆☆☆

男はつらいよ 寅次郎子守唄 (十朱幸代、月亭八方、春川ますみ、上條恒彦)

No.15 ★★★★☆

男はつらいよ 寅次郎相合い傘 (浅丘ルリ子、船越英二)

No.16 ★★☆☆☆

男はつらいよ 葛飾立志篇 (樫山文枝、桜田淳子、米倉斉加年、大滝秀治、小林桂樹)

No.17 ★★★★★

男はつらいよ 寅次郎夕焼け小焼け (太地喜和子、宇野重吉、岡田嘉子)

No.18 ★★★☆☆

男はつらいよ 寅次郎純情詩集 (京マチ子、檀ふみ、浦辺粂子)

No.19 ★★★☆☆

男はつらいよ 寅次郎と殿様 (真野響子、嵐寛寿郎、三木のり平、平田昭彦)

No.20 ★★★☆☆

男はつらいよ 寅次郎頑張れ! (藤村志保、中村雅俊、大竹しのぶ)

No.21 ★☆☆☆☆

男はつらいよ 寅次郎わが道をゆく (木の実ナナ、武田鉄矢、竜雷太)

No.22 ★★★★☆

男はつらいよ 噂の寅次郎 (大原麗子、室田日出男、泉ピン子、志村喬)

No.23 ★★★★☆

男はつらいよ 翔んでる寅次郎 (桃井かおり、湯原昌幸、布施明、木暮実千代)

No.24 ★★☆☆☆

男はつらいよ 寅次郎春の夢 (香川京子、ハーブ・エデルマン、林寛子)

No.25 ※※※※※ 男はつらいよ 寅次郎ハイビスカスの花 (浅丘ルリ子、江藤潤)

No.26 ★★★☆☆

男はつらいよ 寅次郎かもめ歌 (伊藤蘭、松村達雄、村田雄浩)

No.27 ★★★☆☆

男はつらいよ 浪花の恋の寅次郎 (松坂慶子、芦屋雁之助)

No.28 ★★★☆☆

男はつらいよ 寅次郎紙風船 (音無美紀子、地井武男、岸本加世子、小沢昭一)

No.29 ★★☆☆☆

男はつらいよ 寅次郎あじさいの恋 (いしだあゆみ、片岡仁左衛門)

No.30 ★★★☆☆

男はつらいよ 花も嵐も寅次郎 (田中裕子、沢田研二、朝丘雪路)

No.31 ★★★☆☆

男はつらいよ 旅と女と寅次郎 (都はるみ、北林谷栄、中北千枝子、藤岡琢也)

No.32 ★★★★★

男はつらいよ 口笛を吹く寅次郎 (竹下景子、松村達雄、中井貴一、杉田かおる)

No.33 ★★★☆☆

男はつらいよ 夜霧にむせぶ寅次郎 (中原理恵、渡瀬恒彦、佐藤B作、秋野太作)

No.34 ★★☆☆☆

男はつらいよ 寅次郎真実一路 (大原麗子、米倉斉加年、風見章子、津島恵子、辰巳柳太郎)

No.35 ★★☆☆☆

男はつらいよ 寅次郎恋愛塾 (樋口可南子、平田満、初井言榮)

No.36 ★★★★☆

男はつらいよ 柴又より愛をこめて (栗原小巻、川谷拓三)

No.37 ★☆☆☆☆

男はつらいよ 幸福の青い鳥 (志穂美悦子、長渕剛、桜井センリ)

No.38 ★★★★☆

男はつらいよ 知床慕情 (竹下景子、三船敏郎、淡路恵子)

No.39 ★★☆☆☆

男はつらいよ 寅次郎物語 (秋吉久美子、五月みどり、河内桃子)

No.40 ★★★★☆

男はつらいよ 寅次郎サラダ記念日 (三田佳子、三田寛子、尾美としのり、鈴木光枝)

No.41 ★★☆☆☆

男はつらいよ 寅次郎心の旅路 (竹下景子、淡路恵子、柄本明)

No.42 ★☆☆☆☆

男はつらいよ ぼくの伯父さん (後藤久美子、檀ふみ、夏木マリ、尾藤イサオ)

No.43 ★★★★☆

男はつらいよ 寅次郎の休日 (後藤久美子、夏木マリ、寺尾聰、宮崎美子)

No.44 ★★★☆☆

男はつらいよ 寅次郎の告白 (後藤久美子、吉田日出子、夏木マリ)

No.45 ★★★★★

男はつらいよ 寅次郎の青春 (後藤久美子、風吹ジュン、永瀬正敏、夏木マリ)

No.46 ★★★☆☆

男はつらいよ 寅次郎の縁談 (城山美佳子、松坂慶子、島田正吾、光本幸子)

No.47 ★★★★☆

男はつらいよ 拝啓車寅次郎様 (牧瀬里穂、かたせ梨乃、小林幸子)

No.48 ★★☆☆☆

男はつらいよ 寅次郎紅の花 (後藤久美子、浅丘ルリ子、夏木マリ、田中邦衛、村山富市、宮川大助・花子)

特別編 [1997.11.22] ★★★★☆ 男はつらいよ 寅次郎ハイビスカスの花 特別篇 (浅丘ルリ子、江藤潤) TV版 ★★★☆☆ テレビドラマ版 男はつらいよ番外編 山田洋次監督が語る「森川信」4つのエピソード。『男はつらいよ』 | 23notebook 『男はつらいよ』が嫌い – というエントリの気持ち分かります。 | 23notebook